6月26日(日)、パイクスピーク・インターナショナル・ヒルクライムの記念すべき100周年記念大会の決勝レース当日を迎えた。TEAM APEV with MONSTERSPORTは、車両の最終セットアップを行って決勝レースに臨んだ。
午前8:00、天候は快晴、少し高めの気温のなか、決勝レースがスタートした。しかし気温が高くなった事でトップセクションでは残雪が溶けだし、コースがヘビーウェットとなりレースが一時赤旗中断された。また、コース全体的に滑りやすい箇所が多く、プラクティスからタイムを更新できないばかりか、クラッシュする選手も続出。赤旗中断が頻発し、レースの進行は大幅に遅れた。
この影響で、モンスター田嶋がドライブする「Tajima Rimac E-Runner Concept_One」のスタート時間も当初予定より約2時間遅れることになった。コンセントレーションを保つのが難しい状況にあってもパイクスピークを知り尽くしたモンスター田嶋は動じることなくスタートラインについた。しかし、過去3日間のプラクティスとクオリファイでは十分に走ることが出来ず、マシンの状態は十分に仕上がっているとは言えない状態であり、TEAMメンバー全員が一抹の不安を抱えてのスタートなった。
午前11時30分、モンスター田嶋がスタートしたが走行ペースが上がらない。スタート直後から、これまでにないメカニカルなバイブレーションが発生し、アクセルを全開にできない上に、バッテリーの発熱による温度上昇問題もあり走りをセーブせざるを得ない。しかしこのように厳しい状況ながらも、モンスター田嶋は慎重なドライビングで山頂までのコースをクリアし、無事にフィニッシュした。
いくつかのの問題も重なり記録更新はできなかったが、4年連続で9分台のタイムを記録し、TEAM APEV with MONSTERSPORTはエレクトリック・モディファイド部門で3位に入賞した。総合順位でも上位1-5位までのうち3台が、E-RUNNERを含む電気自動車(EV)となり、EVの優秀性が全世界に向けて証明された。
フィニッシュ後の山頂は、当初は晴れていたものの、突然雹混じりの雪が降り出し、長時間降り続いた。パイクスピークの厳しさを改めて痛感させられる出来事であった。
今年100周年を迎えたパイクスピーク・インターナショナル・ヒルクライムは、今後も続いていくだろう。来年以降もチームは、EVでの総合優勝および新記録樹立と、新技術を市販車にフィートバックするという目的のために、パイクスピークに挑戦を続けていく。
「決勝でもバッテリーの温度上昇問題があり、走りをセーブせざるを得ませんでした。コースの一部を走るプラクティスに比べ、フルコースを走る決勝レースではバッテリーに対する要求はさらに厳しくなります。また、プラクティス中には見られなかったメカニカルなバイブレーションも発生しており、厳しいレースとなりましたが、皆様のおかげで、今回私は29回目のパイクスピーク挑戦ができました。今までの功績を称えられてパイクスピーク殿堂入りすることもできました。今回発生した課題の対策をしっかり講じて、来年のレースに臨みたいと思います。応援ありがとうございました。」
総合順位
Pos. | Division - Class | No | Driver | Year, Make, Model | Best Time |
---|---|---|---|---|---|
1 | Electric Modified | 67 | Rhys Millen | 2016 eO PP100 | 8:57.118 |
2 | Electric Modified | 260 | Tetsuya Yamano | 2016 4-Motor EV Concept | 9:06.015 |
3 | Electric Modified | 1 | Nobuhiro Tajima | 2016 Tajima Rimac E-Runner Concept_One | 9:51.978 |
4 | Electric Production | 3 | Blake Fuller | 2016 Tesla S P90D | 11:48.264 |
5 | Electric Modified | 82 | Rick Knoop | 2015 Entropy Racing EVSR | 15:02.413 |
Unofficial
プラクティス3を終えた金曜日の夜、コロラドスプリングスのダウンタウンでは「ファンフェスト」が開催された。例年、3万人を超える多く の観衆が訪れるが、今年も多くの人たちが訪れ、街は大いに賑わった。
メインストリートは歩行者天国となり、予選上位のチームがレースカーの展示やサイン会をおこなった。 もちろん、「パイクスピーク・レジェンド」モンスター田嶋の人気は抜群で、サイン会には長蛇の列ができた。記念写真を撮ったり、沢山の激 励の言葉を掛けていただいたり、モンスター田嶋もファンとの交流を楽しんだ。 日曜日の決勝では、ファンのためにも、優勝はもちろん堂々たる走りを披露したい。
6月24日(金)、3日間のプラクティスの最後となるセッション、プラクティス3が行われた。コースはパイクスピークの中腹を駆け抜けるミドルセクション。グレンコブをスタートしたマシンはほどなく森林限界線を超え、急峻な斜面に刻まれたつづら折れのカーブをいくつも抜け標高を上げて行く。半径が小さいコーナーを、きつい勾配で繋いだコースであるため、コーナーでは急減速によって一気に車速を落とし、次のコーナーに向かってダッシュして行く。ここで、いかにスピードを乗せることができるかがタイム短縮の鍵になるコースだ。決勝前に本コースの走行ができる最後の機会となるため、今までに蓄積したデータを活用しマシンを今年の路面に合わせたセットアップに仕上げることが重要になる。
チームでは決勝に向けて、プラクティス3を実戦テストとして活用するために、数々のセットアップを施した車両を持ち込んだ。路面に合わせた操縦性を確保し、トラクション性能を向上させるために、サスペンションセッティングをさらに煮詰めるとともに、ブレーキの冷却性能を向上させるモディファイを施した。さらに、車両の操縦性を左右するトルクベクタリングの制御も見直した。懸念だったバッテリーマネジメントも改善し、本来の性能を発揮できるようになった。
午前5時30分にプラクティス3がスタート。コースインしたモンスター田嶋は、数々のセットアップの状態を確認しつつ、コーナーをクリアしていく。レースウィーク中の改善が実を結び、回を重ねるごとにタイムも向上、決勝レースに向けて確実な手ごたえを感じる走行となった。
「今日はミドルセクションでのプラクティス3でした。私たちの最後のプラクティスということで、サスペンション、トルクベクタリングなど様々なテストを行いましたが、本当にいいデータがとれました。これを活かして、明後日の決勝は万全を尽くしたいと思います。応援、よろしくお願いいたします。」
決勝レースは、6月26日(日)、現地時間午前8時から開催される。チームは車両の最終調整を行い、決勝に臨む。
Pos. | Division | No | Driver | Year, Make, Model | Run1 | Run2 | Run3 | Run4 | Run5 | Run6 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | Electric Modified |
67 | Rhys Millen |
2016 eO PP100 |
DNS | 02:20.46 | 02:15.00 | DNS | 02:14.07 | DNS |
2 | Electric Modified |
260 | Tetsuya Yamano |
2016 4-Motor EV Concept |
DNS | 02:28:30 | 02:32.84 | 02:22.63 | DNS | 02:21.00 |
3 | Electric Modified |
1 | Nobuhiro Tajima |
2016 Tajima Rimac E-Runner Concept_One |
DNS | 2:41.98 | DNS | 02:38.43 | DNS | 02:35.66 |
4 | Electric Production |
3 | Blake Fuller |
2016 Tesla S P90D | DNS | 03:12.90 | DNS | 02:59.73 | 02:57.65 | 03:06.12 |
5 | Electric Modified |
82 | Rick Knoop |
2015 Entropy Racing EVSR |
− | 03:11.27 | 03:10.82 | DNS | 03:09.11 | DNS |
6月23日(水)チームのドライバー、モンスター田嶋がパイクスピーク・インターナショナル・ヒルクライムの殿堂「ホール・オブ・フェイム」に加えられる事になり、セレモニーが開催された。
今回の受賞は、2011年のパイクスピーク・インターナショナル・ヒルクライムにおいて、過去誰も破ることができなかった「10分の壁」を世界で初めて破り、ダート/ターマック混成コースでの世界記録「9:51.278」を記録したこと、パイクスピークで通算10勝を挙げたことから与えられた栄誉であり、アメリカ人以外の受賞は初の快挙である。
これに伴い、モンスター田嶋は、自身がドライブし世界で初めて成功したツインエンジンの競技車両「スズキスポーツ ツインエンジンカルタス(1993年パイクスピーク アンリミテッドクラス優勝車)」をコロラドスプリングス ペンローズ歴史博物館に寄贈した。
「今日は最高に素晴らしい日です。私は1987年からパイクスピーク・インターナショナル・ヒルクライムへの挑戦を続けて参りました。その間にツインエンジン、V6ツインターボ、そして今は電気自動車と色々なクルマを作って挑戦してきました。その中で世界新記録も達成しましたし、世界初めて10分の壁を破ることもできました。そういった大きな功績を認められて、パイクスピークの殿堂入りをすることができました。パイクスピークでの殿堂入りは外国人では私が初めてです。100周年記念ということで初の殿堂入りのコンテストで選ばれた事を大変名誉に思います。この後、私の後に続く日本の方々が、次の100周年の殿堂入りを目指して頂ければと期待しています。今日は本当にありがとうございました。」
6月23日(水)、プラクティス2/クオリファイが行われた。コースは6月21日のサンクションド・プラクティスでも走行したボトムセクション。チームではこれまでに様々なセッティングを試しデータを蓄積してきたが、初日と同じコースを再び走る事で、進むべき方向を明確にすることができる。
午前5時30分にプラクティス2/クオリファイがスタート。朝の気温はやや低いが天候は快晴。ドライバーのモンスター田嶋はマシンや路面の状況を感じ取りながら"Tajima Rimac E-Runner Concept_One"を走らせた。
主なメニューは、よりしなやかに路面を捉えられるようサスペンションセッティングの更なる煮詰めになるため、セッティングを大きく振るなど現地コースでしかできない事を試した。また、バッテリーマネージメントを考慮し全力走行を行っていないためタイムは振るわないが、マシンパフォーマンスは着実に進化を遂げている。
「今日はバッテリーのマネージメントのため一度しか走行ができなかったのが悔やまれますが、私には過去29年のパイクスピーク参戦経験があります。決勝レースには最高のパフォーマンスをお見せできるよう、セットアップをしていきますので、応援よろしくお願いいたします。」
明日のプラクティス3は、ミドルセクションで行われる。コース中ほどの、標高を一気に上げて行く区間であり、電気自動車にとってはバッテリーへの負荷が大きくなるため良いテストになる。
Pos. | Division - Class | No | Driver | Year, Make, Model | Best Time |
---|---|---|---|---|---|
1 | Electric Modified | 67 | Rhys Millen |
2016 eO PP100 | 03:36.410 |
2 | Electric Modified | 260 | Tetsuya Yamano |
2016 4-Motor EV Concept | 03:43.229 |
3 | Electric Modified | 1 | Nobuhiro Tajima |
2016 Tajima Rimac E-Runner Concept_One |
03:59.888 |
4 | Electric Modified | 82 | Rick Knoop |
2015 Entropy Racing EVSR | 04:44.007 |
5 | Electric Production | 3 | Blake Fuller |
2016 Tesla S P90D | 04:47.264 |
プラクティス1は、トップセクションの走行となった。標高3890mの「デビルズプ レイグラウンド」がスタート地点となり、決勝レースでもゴール地点となる 4300mの山頂に向けて尾根づたいを走る高速コースである。
午前5時30分、プラクティス1がスタート。開始当初の天候は快晴で気温も平常通りで問題はなかったが、中盤から突然雪や雹混じりの雨が降り、路面は非常に滑りやすい状況となってアクシデントが続出。プラクティスは数度の中断を挟んで続行された。"Tajima Rimac E-Runner Concept_One"の走行中にも降雪や降雨があったが、ドライバーのモンスター田嶋は、突然の事態にも冷静に対応し、慎重に走行を重ねた
「 今日は天候の問題もあり、全力で走行できなかったのは非常に残念です。しかし、変わりやすい天候にも立ち向かわなければならないのが、パイクスピークです。トップセクションでのデータの収集はできましたので、明日のプラクティス2とクオリファイ、さらに決勝レースに向けてセットアップを進めていきます。」
明日はボトムセクションでプラクティス2、クオリファイが行われる。ボトムセ クションでの走行タイムは予選タイムとして扱われるため、重要な1日となる。
エレクトリック・モディファイド / エレクトリック・プロダクション
Pos. | Division - Class | No | Driver | Year, Make, Model | Run1 | Run2 | Run3 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | Electric Modified | 67 | Rhys Millen |
2016 eO PP100 | DNS | 02:23.91 | 02:17.51 |
2 | Electric Modified | 260 | Tetsuya Yamano |
2016 4-Motor EV Concept | 02:52:18 | 02:36.38 | 02:30.27 |
3 | Electric Modified | 1 | Nobuhiro Tajima |
2016 Tajima Rimac E-Runner Concept_One |
02:52:59 | DNS | 02:36.19 |
4 | Electric Production | 3 | Blake Fuller |
2016 Tesla S P90D | 03:34:33 | 03:43.21 | 03:04.38 |
5 | Electric Modified | 82 | Rick Knoop |
2015 Entropy Racing EVSR | 03:29:02 | 03:17.10 | - |
*Unofficial
第94回 パイクスピーク・インターナショナル・ヒルクライムは本日からいよいよコース走行がスタート。サンクションド・プラクティスと言われる自由参加の練習走行だが、レースコースの走行機会は少ないだけに有効に使いたいところだ。
エレクトリック・ディビジョンに割り当てられたのは、標高2800mのスタートラインから、3480mのグレンコブまでのボトムセクション。コース全長の約半分を走行するロングディスタンスのセクションであり、決勝レースにより近いデータを収集することができる。コースは前夜に激しい雷雨と雹があったものの、雨はすぐに乾きドライコンディションでのスタートとなった。
パイクスピークの朝は早い。決勝日までは日の出とともに走行が開始されるため、チームは夜明け前からマシンの走行に向けて準備を始める。"Tajima Rimac E-Runner Concept_One"は、レースウィーク直前のチームテストで好タイムを記録しており、チームの期待が高まる中でコースインして行った。ドライバーのモンスター田嶋はマシンのセットアップの出来具合やコースの状況を感じ取りながら、快調なペースでコーナーをクリアしていく。ところが、予想外のバッテリー発熱により、スローダウンを余儀なくされる事となった。
本日の公式練習走行では、マシンの持つポテンシャルを十分に発揮できなかったが、セットアップの方向性に間違いはないことを確認でき、ロングディスタンスでの貴重な走行データを収集できた。
「今日はサンクションド・プラクティスの機会を使ってテストを行いました。予想外のバッテリー発熱によりスローダウンを余儀なくされ、全力での走行はできませんでした。しかし、今回の走行はあくまで練習走行です。これからのプラクティス1、プラクティス2、クオリファイの3日間を有効に使い、決勝に向けてセットアップを完全にできるよう準備を進めています。」
明日のプラクティス1は、一転して山頂付近を走行するトップセクションで行われる。高地のため空気が薄く、ドライバーにとっても、マシンにとっても過酷な状況を強いられる。レースコースの走行機会が少ないため、ここでもできるだけ多くのデータを収集することが重要になる。
6月20日(月)、今日から正式にレースウィークがスタートし、参加受付と車検が行われた。1916年に始まったパイクスピーク・インターナショナル・ヒルクライムは、今年100周年という節目を迎える。100年目の勝者は誰か?いよいよ、歴史と伝統に彩られた特別な大会の火蓋が切られた。
ブロードムーア・ワールドアリーナで行われた車検は快晴に恵まれた。車検場では、今年の大会に参戦する車両が一同に会し、TEAM APEV with MONSTER SPORT のライバルたちも姿を見せた。エレクトリック・ディヴィジョンでは、昨年に引き続き最大のライバルとなる事が予想されるリース・ミレン選手のマシンが登場。今年も高い競争力を感じさせる。また、日本からは山野哲也選手が今年も参戦し、新型車両(電気自動車のホンダ(アキュラ))を持ち込んだ。さらに、総合優勝を争うライバルとしてはガソリン車の存在も忘れてはならない。フランスから2014年の覇者、ロマン・デュマ選手がホンダ製のパワーユニットを搭載したアンリミテッド・ディビジョンのマシンで参戦する。
リース・ミレン選手 | 山野哲也選手 | ロマン・デュマ選手 |
車検では安全面を重点的に見られる。ドライバーのヘルメットやレーシングスーツに始まり、レースカーでは、ロールケージやシートベルトなどが入念にチェックされる。さらに電気自動車ならではのものとして、車両の接近を知らせる警報音の音量や、電気系統の安全装置などが重点的にチェックされた。もちろん、Tajima Rimac E-Runner Concept_one は、問題無く車検をクリアした。
明日(現地時間21日)は公式練習が行われ、エレクトリック・ディビジョンは、ボトムセクションを走行する。今年始めてのコース走行になるため、続く3日間の練習/予選、そして26日(日曜日)の決勝レースを攻略するために、コースコンディションとマシンのマッチングを慎重に見極めるための走行になるだろう。