大会の舞台となるのは、アメリカ・コロラド州、ロッキー山脈に連なるパイクスピーク山。
「アメリカズビューティー」と称される美しい大自然が広がる国立公園だ。
パイクスピーク山の山頂へ至るコースは、スタート地点の標高が2800m、
ゴール地点の標高は4300mと非常に高地であるため空気が薄く、ガソリンエンジン車では
低地に比べて約6~7割程度まで大幅にパワーダウンする。
その結果、レース車両はより大きなパワーを必要とし、大量の排気ガスを発生させる。
その点、電気自動車は高地でもパワーダウンせず、しかも排気ガスの発生はゼロ。
この大自然の中を走るクルマとしてまさに適役と言える。
自動車が生み出されて間もない1897年、フランスのニース郊外の丘を舞台に、記録に残る限りではじめての自動車による山登り競争「ヒルクライム」が開催された。
ヒルクライムは、最も古くからあるモータースポーツの1つの種目である。
山頂を目指し、ドライバーが己のマシンを駆ってひた走るこの競技は、シンプルで荒削りにさえ見えるが、それゆえに人を惹きつける魅力がある。山を駆け登るというその競技の性質上、レースの舞台は見晴らしの良いロケーションであることが多く、また普段公道として使用されている道路であることもあり、高度な競争の場でありながら、独特のアットホームな雰囲気を持っている。それもまた、競技者やファンを捉える要素なのだろう。日本ではあまりポピュラーではないが、欧米には大きなイベントも多く、熱心なファンを擁している。
世界で一番大規模で有名なヒルクライムイベントは、アメリカのコロラド州、パイクスピークの観光道路を舞台に開催されるパイクスピークインターナショナルヒルクライム―通称The Race to the Clouds(ザ・レース・トゥ・ザ・クラウズ)―である。
1916年に創始されたこのイベントは途中第2次世界大戦による中断などをはさみながらも世界各地から挑戦者を集め、最も注目されるヒルクライムイベントに成長した。いまや、1911年から始まるインディ500に次いで、単一シリーズとしては世界で2番目の歴史と伝統を誇るにいたっている。
参加者たちは標高4300mのゴール地点に向かって、約20kmのコースをひたすら駆け登る。スタートとゴールでも高低差は実に1400mを超え、コーナーの数は156を超える。これまで、ラリーチャンピオンなど国際的に著名なドライバーが多数このイベントに挑戦してきた。スタート地点からは見えないゴールを目指して、厳しい高地特有の天候や滑りやすい路面に挑戦してきた彼らの真の相手は、過去樹立されたレコードでも他の競技者でもなく、パイクスピークという頂そのものなのだ。